コロナウイルスワクチン接種後の上腕の痛みに対するパルス高周波治療
新型コロナウイルスに対するワクチンを半年ほど前に接種された後から、接種側の肩関節周囲の痛みが出現して改善しないため、当院を受診された患者様がいらっしゃいました。就眠にも支障があるとのことでした。また、上肢を持ち上げて作業をしていると、時々力が抜けてしまうことがあると困っていらっしゃいました。
症状の部位から、腋窩神経の障害を疑いました。腋窩神経ブロックを施行したところ、即時的に痛みが消失しました。その後、4日間ほどは痛みなく過ごすことができ、徐々に痛みが再燃し始めました。神経ブロックの効果から、腋窩神経障害の診断で間違いなさそうだと判断しました。神経ブロックに使用する局所麻酔は、せいぜい2-3時間しか効果がないはずですが、その時間をはるかに超えて痛みが緩和されたことから、神経ブロック・パルス高周波法による痛みの治療の効果が期待できると考え、患者様と相談の上でパルス高周波法による治療を行いました。
パルス高周波法での治療後、4-5日間はかえって痛みが強くなってアセトアミノフェンを内服する必要があったそうです。しかし、その後痛みが消失して、1日に1回、患部を圧迫すると痛みがあったかなと感じるような違和感を自覚する程度まで痛みが消失したそうです。腕の力が急に抜けてしまうことも無くなったそうです。
あくまで個別の治療例ですが、痛みの原因を診断し、治療が可能かどうかを慎重に判断することで半年近く悩まれていた痛みが解決した1例と考えます。パルス高周波法施行後の数日間、患部のこわばりが出現したりや痛みが強くなる方は時々経験しますので、その点も含めて典型的な経過かなと感じました。今後、痛みが再燃しないとは限りませんし、改めて治療が必要になる可能性がありますが、診断がつき、解決する道筋を立てたことは治療上非常に重要なことだと考えています。
本例の経過は、患者様のご承諾をいただいてご紹介させていただきました。ご協力をいただけましたことに感謝申し上げます。痛みにお困りで不安を感じていらっしゃる中、数ある診療所・病院の中から当院をご受診いただき、治療を受けていただけたことにも改めて感謝申し上げます。